Samarasa


Samarasa とはサンスクリット語で「心の平衡」、mind at rest、とかいう意味があるそうです。この作品はアンサンブル・アンテルコンタンポランのヴァイオリニスト、ヘサン・カン の為に書かれた作品です。フランス側のアルプスの山の中で行われているメシアン音楽祭からの委嘱でした。

この作品を書くにあたって、今まで僕のヴィオラの作品「flux」などもそうなのですが、音程(ですから奏者から言えば「左手」の運動、運指ですね)ばかりが注目される現代音楽よりも(もちろんそれも大事ですが)奏者の右腕、弓の運動、スピードにとても興味を持つようになりました。ですので最初の部分は1つの音を3弦で交互に、弾く事から始まり、奏者の「左手」の指上の地理的な(?)シフト+それには無関係にうごく弓の運動によって、普通ではそうは弾かない、と言った不自然なメロディがでてくる、という感じを試してみました。それを書くにあたっては左手のヴァイオリンの部分を紙に書き、自分でも指を当ててみて書いたりしてみました。常にcross-string(弦をまたいでフレージングされる)というのもある意味弦ならではの(不自然な)音、だと思います。

あと激しい、力強い(僕の想像ではエレキギターのスターがヘヴィメタルバンドでライヴのクライマックスで弾きまくってる感じ)速いパッセージは最後の最後まで残しておき、そこから今までの「心の平衡」が崩れ、大爆発する感じです。今までの「心の平衡」の間エネルギーが蓄えられていた、という感じでしょうか。

藤倉大



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