WHIM
for piano

Cadenza from Piano Concerto No3 "IMPULSE"


この作品はすべて友情の元にできた作品。

ピアニスト小菅優さんに書いたピアノ協奏曲3番「インパルス」のカデンツァパートが独立した作品。「インパルス」はモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団、読売交響楽団、スイス・ロマンド管弦楽団との共同委嘱。

小菅優さんとは前からずっと友達で、音楽とは関係ないドラクエとかゲームの話でいつも盛り上がっていた。僕は勝手に小菅優さんのベートーヴェンを始めとするアルバムのファンで、かなり聞き込んでいて優さんの演奏はよく知っていた。優さんには言わなかったけど。その数年後にこのピアノ協奏曲3番を書くことになった。

僕個人的な認識は、ピアニストは小菅優さんと他のピアニストの人たち、と分けるくらい優さんのピアノは毎回すごい、と思っている。そんなすごいピアニストでも僕の「インパルス」は「毎日長時間練習しないと弾けないくらい難しい。なのに藤倉さんは全くそれが分かっていない」と優さんが新聞のインタビューに答えているのを読んだ。そんなに難しいのか、あの曲。

そこで日本初演の時だったか、オーケストラとのリハーサルの後、僕は暇なので優さんの楽屋に行ったら「カデンツァのパート聞いてほしい」というので、聞こうとしたら、その日本初演の指揮者だった山田和樹くんも入って来て「カデンツァ弾くんだって、聞く?」「聞く聞く!」と二人で優さんが弾くカデンツァを聞いた。終わったあと「難しそうな曲よくそうやって弾けるねぇ」と僕が言ったら「自分で書いといて何言ってんの!」と二人に突っ込まれた。でも本当にそう思う。ペダルは使うな、という部分も多いし、あんなに違う音のレイヤーが重なってるのに、全然違う楽器で弾いたかのように聞こえる。なんでそんなのを両手で、あのスピードで、その上音色もすべて美しく弾けてしまうのかな、と不思議でならない。

そこで「これせっかくだから単独のソロの作品にしよう!」と思い、このWHIMができた。

藤倉大