Koto Concerto / 箏協奏曲



この箏協奏曲は、若きソリスト、LEOさんからの個人委嘱を受けて作られました。
この協奏曲の前に、LEOさんに僕が書いたソロの作品「竜」がベースになっています。

「竜」を作る時は、頻繁にLEOさんとメッセンジャーなどで、やりとりをしました。
まず最初にオンラインで数時間話し、箏の演奏はもとより、「どうしてLEOさんは箏を選んだのか?」など、いつも僕は依頼してくださる演奏家に質問します。
やはり、好きな楽器は?というのは誰でもあるかもしれませんが、人生の多くの時間をある楽器に捧げようという決意と、それを続ける、というのは何か強い理由があるはずです。
そういった、演奏家がその楽器に向ける気持ちは必ず作品を作る上でのインスピレーションになります。

今でも覚えているのは、数年前の年末に、その最初のオンラインでの会話をLEOさんとしました。作曲に取りかかれるのは数ヶ月後でしたが、早めの準備として。
なのに、LEOさんとオンラインで試した奏法、コンビネーションなどが、なぜか僕の頭から離れなかったのです。気が付いたら、「試し」として冒頭の断片を書いていた。その断片が数年後、箏協奏曲になる、とはその時は夢見にも思わず。
その断片の演奏録音が勢いよくLEOさんから毎日数通届く。
それを聞くとまた続きが書きたい。。。年末に家族で日本の実家で休暇中だったのにも関わらず、それを続けました(そのお影かどうか、寝込んでしまい、住んでいる英国に帰る飛行機には僕だけ乗れなかったのです)。

日本の楽器に曲を書く時は、僕は必ずその楽器の伝統的な奏法を研究します。
日本の楽器の伝統奏法には、西洋音楽だったら実験的奏法になるような技法が、もう何百年もされている。
僕はいつも、それらをどう組み合わせたら、今までにないような日本の伝統楽器のための音楽になるのか、それでいてその楽器の、そして奏者の良さが炸裂するような音楽になるか、を奏者と一緒に研究して作っていきます。

オーケストラの部分は、その箏から出る音がどう拡大されるか、それは音量の拡大ではなく、音楽のイメージとして、広がるか、を目指して書きました。
箏に羽が付き、箏のパートが羽ばたいていくのをオーケストラが助ける、と言った感じでしょうか。オーケストラはその想像上のスーパー箏の一部として、箏と一体化する。。。そんなことを夢見て作りました。

藤倉大