Returning
"Returning" has been especially commissioned by Noriko Ogawa. I am a big fan of her as a pianist and I especially like the way she makes the piano sing during quiet passages of music. I decided in this small solo piece that the dynamic range would be largely piano and pianissimo. I also wanted to go back to basics, remembering how I used to bash out unison tunes on the keyboard, before I had my first piano lesson.

Here Left hand and Right hand play together, then quietly, the piece develops using only 3 basic rhythmic patterns. I also wanted impose two main restrictions: The maximum number of notes played together to make a chord would be only three. The use of Pedal is banned. These restrictions induced a feeling of melancholia, and also gave me a big headache! It took really long time to write and discarded much more than is heard in the piece. I have never composed music with this level of restriction, especially for piano which is an instrument with 88 keys and limitless possibilities. However, these restrictions have opened a new door for me.
I think that the pieces I have written after this work are somehow different….

Dai Fujikura



2009年2月世界初演・その少し後の日本初演を控え、フィルハーモニアと名古屋フィルハーモニー交響楽団の共同委嘱によるピアノ協奏曲を、小川典子さんのために書くことになりました。それに先立って、小さなピアノ曲を、典子さんより委嘱されました。個人からの委嘱というのは僕にとって初めてのことで、どちらかというと典子さんの為に特別にオーダーメイドのドレスを作るような感じでこの小品は2009年に発表するピアノ協奏曲の「核」として、アイディアの詰まった一曲になればなと思いながら書きました。

僕は、典子さんのピアノ演奏のファンで、とりわけ、弱音のなかでピアノを歌わせる彼女の技術に魅かれていましたので、これは良いチャンス!と思い「リターニング」では、曲の全部を、ピアニッシモの弱音で演奏してもらうことを思いつきました。また、この作品ではまずピアノの(僕にとっての)原点にもどろうと思い、子供の頃、僕が習いたてのピアノをペダルなしで叩いていたことを思い出し (足がペダルに届かなかったため)、この曲は「ペダルを使わない」、あと、右手と左手が同時に、2つのラインを演奏して始まり、ベースになるリズムのパターンは3つのみしか使わないこと。同時に鳴らす音は3つまで、つまり3つの声部の演奏で、和音は出てきません。

88鍵と最大の可能性を持つ楽器に対してあえて音を使いまくらない作品を厳しい制限の中で書くというのが僕自身にとってチャンレンジでした。

なんて作曲する前からこんなに制限を決めたおかげで、実際書く時は大変で大変で、毎日悪魔のささやきが頭で「いいじゃん、そんなことしなくたって、ちょっとした小品なんだしさ、ちゃっちゃっと書いちゃおうよ、ね?」なんていうのを右手で遮りながら、「しかしこれ演奏するの結構大変だろうなあ、まあいっか、僕が練習する訳じゃないし」とか無責任なことを思い考えながら書き続けて行きました。おかげでかなり推敲に推敲を重ねて、僕の予想を遥かに長くかかってこの「リターニング」が完成しました。

この作品のあと、いろいろとオケの作品、打楽器12人の作品、エレクトロニクスとオケの作品といろいろと書いたのですが、それらはどれも全く違う書き方で書かれた作品ですが、原点はこのリターニングにあると思います、そう言う意味でも僕にとってはとても意味のある作品になりました。さて、ピアノコンチェルトどうしようかな、、。

藤倉大


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