Banitza Groove!

僕にとって大変異例の作品で、つい数年前まで自作リストに載せていなかった「特別イベント用」の作品です。それはどうしてかと言いますと・・・ まずこの作品の原型は、ウィーン・フィルの首席奏者たちからなる、ウィーン・リング・アンサンブルのニューイヤー・コンサートの為に2007年に作曲しました。ニューイヤー・コンサートですから、全部ワルツです。「ワルツの新しい作品、という感じで書いて欲しい」と頼まれました。そこで僕は考えたのですが、どれだけ頭をひねってもワルツは書きたくなかった。ワルツは嫌なので、同じダンス・リズムであるブルガリアのダンスをベースに書いてよいか訊いてみたらOKだったので、そうしました。ブルガリアのダンス・リズムは、世界で一番複雑、と言われるもので、「ラインダンスなのによく足がもつれないなあ」と思いながら、ブルガリアに行くと時々 ダンスの様子を見ていました(僕の妻はブルガリア人なので、ブルガリアに行く事が結構あります)。僕がベースにしたダンス・リズムはPetrunino Horo というもので、3+4+2+3というリズムです。そしてそのダンス・リズムをベースに、できるだけ「祝」な感じを表そうと書きました。何せニューイヤー・コンサートですから!
初演ツアーの数年後、友人が新しいオーケストラをイギリスで作り、そのオープニング公演を祝う、というので「何か曲ないか?」と訊いてきました。「せっかくの新しいオーケストラ誕生の場でワザワザ現代音楽じゃなくても良いんじゃない?」と思いながらも(これが欧州では結構あるんです)、ニューイヤー・コンサートのために書いたこの「バニツァ・グルーヴ!」の事を思い出しました。そこで元々室内楽アンサンブルの為に書かれたものをオーケストレーションするだけでなく、大幅に書き直して良いか訊いてみた所、「『改訂版委嘱』させてくれ」と言われたので、大幅に作品を書きかえ、新しいオーケストラ版の「バニツァ・グルーヴ!」が完成しました。その後もこの作品は僕のいつもの作曲活動のモットーである「自分にとって何か新しい音、音楽を探る」というものと少し離れた所にあった為、作品リストにも載せていませんでした(それなのにみんなどこから見つけてくるのか、演奏させてくれという依頼も多かったのですが、全部断っていました)。
数年前に仲の良い友人指揮者のマーティン・ブラビンズから「チャリティ公演をロンドンでやるので、そこで弾く曲が無いか?」と訊かれ、長さやオーケストラの編成などがあっていたので、この曲を提案しました。そしてそこで2度目のこの作品のオーケストラ版が演奏されたんですが、マーティンは何度も何度も「そんなまた難しい事言わずにさ、この作品を隠さずに世に出すべきだよ!」と強く言うので、僕も悩んだ結果、解禁しました。解禁した直後、金聖響さんが欧州ツアーで演奏してくれて、いろんな所で演奏され始めました。
解禁するきっかけとなったマーティン・ブラビンズの指揮と名古屋フィルハーモニー交響楽団の皆さんで演奏されることを、僕は嬉しく思います。
「バニツァ・グルーヴ!」のバニツァはブルガリアの国民的料理で、チーズやほうれん草の入ったパイです。家でも1ヶ月に2回くらいは妻が作ってくれます。




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